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2009-12-17

謝罪会見

注)非常にグロテスクな表現を含んでおります。それでも宜しい方は追記からどうぞ^^

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2009-11-06

嘘つき

「きみも怖がることなんてないよ。僕を愛している限り、ね」

そう言ってのけた彼は、いま私の眼前に横たわっている。私の手には、窓から差し込む月光を受けて黒々と光る拳銃。壁に施された鮮やか過ぎる赤の装飾が、立ち昇る硝煙越しに、《絶対的な死》を私に告げていた。縋るべき希望なんて微塵ほども残されてはいるまい。……最初からそんなモノがあればの話だけどね。

長身、色白。端整な顔立ちと軽やかな口先に、女性たちはさぞ魅せられたことだろう。自分の言葉には何事をも叶え得る魔力が宿っている……彼はそう信じて疑わなかった。良く言えば世渡り上手、悪く言えば嘘つき。数々の女を渡り歩いて来た彼が、一体全体どうして私のような凡庸な人間に惚れてしまったのか、未だに理解できない。それ以上に、どうして私が――俗世の男に興味などあろうはずもない私が――かくも浅はかな男に魅せられてしまったのか、甚だ自分が分からない。思い返せば彼はあまりにも単純だった。あまりにも子供で、それゆえこの上なく純粋。純粋とは即ち、何色にも染まり得る。例えそれが絶望の色であっても。私は彼を、二度殺したのだ。一度目は、心を。二度目は、身体を。私が彼を愛してしまった時点で、彼の末路はすでに決定していたのだ。

「心中しよう? 一緒に幸せになろうよ」
不思議なことに、彼の遺体を目の前にして、何ら感情も湧かない。
「怖くなんてないさ。きみを愛しているからね」
悲しみも怒りもない。現実感覚が遊離しているとさえ言っても良い。
「きみも怖がることなんてないよ。僕を愛している限り、ね」
いつも以上に冷静だ。死色の壁が、相変わらず不快な周期で私という世界を旋回しているだけ。それもいつものことだ。あまりにも呆気ない。人間とは、これほどまでに脆弱なのだ。

 しかし眼前には紛うことなく遺体があり、紛うことなく私が殺めたという事実もそこにある。勿論それが、彼自らが望んだ死であっても、私が犯した殺人に変わりはない。私はそんな十字架を背負ったまま生きられるほど強い人間ではない。ましてや、愛する人を手にかけてしまったのだ。私は、直ちに消えて然るべき負の因子である。社会的にも破滅しているし、精神的にも壊滅している。ここに男の遺体があって、私が居て、惨劇に染まった部屋がある以上、これが現実であって、これがすべてなのだ。ならば何を躊躇する必要があろうか。

私は意を決して、銃口を自分の側頭に当てがい、引き金に手をかけた。

しかし弾丸が放たれることはなかった。なぜなら、私の手が恐怖で震えていたからだ。怖い。死ぬことが、怖い。あまりにも得体の知れない《死》というものへの純粋なる恐怖が、黒い波となって今更のように全身を襲った。私は拳銃を手放した。邪悪なる塊は乾いた音とともに畳に落下した。

そして途端に、私は目頭が熱くなるのを感じた。ぶわっと涙が溢れ出た。顔をくしゃくしゃにして、わんわん声を上げながら泣いた。涙という涙を滂沱の如く流した。何度も彼の名前を呼んだ。しかし応えてくれるわけがない。死とはつまりそういうことだ。だから悲しい。それ以上に、後を追うことすらできない自分が情けなくて、腹立たしい。私は、地団太を踏んだ。叫んだ。髪を掻き毟った。障子をびりびりに引き裂いた。留ることを知らない激情の海に身を委ね、すでにある惨劇に更なる惨劇を重ねた。そしてもう一度遺体の方へ振り返った。泣き崩れながら、言葉を吐いた。

「怖いじゃないか。いくら愛していても、死ぬのなんて怖いよ!」
私は彼にそう憤った。



文芸部の外部誌に投稿したテーマ作品。テーマは「嘘吐き」。ほぼ無理矢理ですが。

2009-06-04

無題

 エロスは激怒した。どうして母の我儘のためにわざわざ人間界に降りねばならぬのか。考えれば考えるほど理不尽に思えた。エロスには我慢がわからぬのだ。

どうやら地上の人間界で、王の末娘プシューケーが絶世の美女として噂になっているらしい。これに嫉妬した美の女神たる母アフロディーテが、この娘が子孫を残さぬよう鉛の矢で撃つようにエロスに命じたのだ。

「愚かしき地を這う獣の分際で、妾(わらわ)に美の決闘を挑もうとは、誠に尊大よのう。束の間の栄華を満喫するがよい、小娘よ!」
「しかし母上様、一方的に対抗意識を燃やされているのは母上様の方ではないのですか」
至って冷静にエロスは抗議する。
「はん! これは明らかな神への挑戦状よ! プシューケーよ、そなたを千の魔術と千の剣を以って社会的に抹殺する! さぁ行け、エロス! 鳥の如く飛び、神々の矢となって敵を射止めよ! これは母親としての命令よ! 吉報を期待して私は幾月でも待とう!」

その言葉を聞いて、母上には逆らえないとエロスは初めて理解した。私は、信じられている。私に生を授けてくれた母上が私に任務を託したのだ。先刻の怒りの感情をエロスは酷く恥じた。母上は私を信頼している。与えられた任務をこなすと信頼している。私は、信頼に報いねばならぬ。今はただその一事だ。神々の翼を身に纏い、地上の人間界まで飛んでゆこう。飛べ! エロス。

 しかし皮肉なことにエロスはプシューケーに一目惚れしてしまったのである。美しすぎるその寝顔に見とれ、遂に鉛の矢は放たれることはなかった。

「おおプシューケー、どうしてあなたはプシューケーなのか! お父様と縁を切り、プシューケーという名をお捨てになって。それが駄目なら、私を愛すると誓って、そうすれば私もエロスの名を捨てよう。神とは何か! 人間とは何か! 同じ空気を吸い、同じ水を啜る。薔薇と呼んでいる花を別の名前にしてみても美しい香りはそのままではないか。それを禁忌というのなら、どうか私から神の名を奪いたまえ!」

しかし当のプシューケーはというと、寝ぼけていたのか、あまり話を聞いていなかった。目を擦りながら眼前の闖入者たるエロスに焦点を合わせると、やっと事態を把握したようで、はち切れんばかりの大声で叫んだ。
「助けてぇえええ! 変態! 侵入者! 警備兵は何をしていらっしゃる!」

これも至って当然の反応である、なぜなら真夜中の寝室にいきなり全裸の男が現れて、しかも耳元で可哀想な台詞を呟かれた日には、誰だって同じ対応に出よう。プシューケーは端整な顔を驚愕に歪ませながら部屋の隅に身を縮ませていた。

「誰よ、あなた。城の警備を潜り抜けるとは、何者よ!」
「私はエロスである」
「きゃぁあああああああ!」
エロスは、ひどく赤面した。

 結論から言うと、エロスは警備兵に連行され、地下牢に放り込まれ、変質者の烙印を押され、そしてその噂が尾ひれをつけて神々の天上界にまでやってきた。
「速報!愛の神エロスが人間界の女性宅に侵入、猥褻な行為を行ったとして人間界の警察に書類送検されました。検察はさらに詳しく調べていく方針」という文字列が、オリンポス新聞の一面を大胆に飾っていた。それを見た母アフロディーテは息子の不祥事を大いに嘆き、二度とあんな子を信頼するまいと涙した。

「何ということだろう! 愛を司る神ともあろう方が! 言語道断である!」
天上界の者たちは口々にそう言い合い、エロスの風評は地どころかハデスにまで落ちた。皮肉なことか、結局社会的に抹殺されたのはプシューケーではなくエロスの方であったのだ。

 かくしてエロスという単語が、現代持つ意味で使われるようになったとか。幾千年の時を経て尚、彼の名は受け継がれるのである。

2009-02-20

不条理で理不尽な世界に捧げるバレンタイン 後編

一応、閲覧注意です。過激な描写はないですが、女装好きの変態少年に気分を害される方は記事スルーでお願いします^^



放課後、俺はどうにでもなれという自暴自棄な気分で駅前のカラオケ店前にて一人待機していた。トモヤはというと、着替えてくるからという連絡を残して一旦帰宅したのだが、一向に戻る気配が無い。この瞬間にも、世の中にはバレンタインを謳歌している高貴な人種もいるのだろうな、という惨めな妄想に浸りながら、俺は駅前広場を行き交う人々の群れをぼんやり眺めていた。

「健斗くん!」
背後から甘ったるい声。普段から女の子に下の名前で呼ばれることのない俺は、不覚にも一瞬ドキッとしてしまったが、すぐに声の主に気付いて、自分が恥ずかしくなった。振り向くと案の定、そこにはトモヤが居た。

「ごめん、待たせたかな?いやいや、自分で聞いておきながら愚問だよ。健斗くんに待機を要求したのが他でもないこの僕だからね。放課後の貴重な時間を空費させてしまって、ひたすら申し訳ない気持ちでいっぱいだよ」
いつもの軽口を叩くトモヤに、しかし俺はツッコミを入れる余裕はなかった。なぜなら俺は、親友の奇抜すぎるファッションに釘付けだったからだ。刺繍の入った可愛い白ブラウスに、ヒラヒラの赤いミニスカート。黒いニーソクスが華奢な両足を膝上まで包み、スカートからチラリと覗く太ももの肌色を際立たせていた。胸元にはパッドでも入れているのだろうか、やわらかな膨らみがブラウス越しに確認できた。スレンダーな体躯と端整な顔立ちとが相まって、足元から毛先まで、反論のしようもなく見事な美少女を完成させていた。これがもしトモヤでなければ音速で卒倒しているところだが、どうしても親友であるという事実は拭えないので、かといって眼前にある光景を簡単に受け容れられるはずもなく、俺はただ単にフリーズするしかなかった。

「またしても僕の斬新な装備に興味津々のようだね、健斗くん。男の子だから仕方ないのだろうけど、僕もあくまで生物学上はあんたと同じ男性だからね?欲情されると世間体的にも気持ち的にも非常に困るんだ。あ、ごめんごめん、ちょっと言い過ぎたかな。さすがに親友に下心を抱くような輩ではないもんね、健斗くんは。僕の理解と配慮が足りなかったよ」
「お前の理解と配慮の供給量は、推奨値の遥か斜め下を滑空してる気がするんだが、気のせいか?」
「紛れもなく幻覚だよ。早期に専門医に診てもらうことを勧めておくよ」
トモヤとのアホすぎるやりとりに疲れ、俺は疑問を口にすることで話題の軌道修正を図った。
「ところで、お前の友人だという男女数人はまだ来ないのか?」
「ああ!丁度その件について伝えようと思っていたところなんだ!思っていたところなんだが、どう切り出したらいいものかと、あれこれ迷ってはイジイジしていたんだ。そんな僕の事情を斟酌して、会話に切り口を入れてくれた建斗くんに感謝するよ!些細な事ながら、やはりこれが親友というものなのだと改めて実感したよ!」
「いいから早く教えろよ」
「失礼。つい興奮してしまうのが僕の昔からの性分なんだ、寛大な心で以って許してくれ。友人数人の件だが、どうやら遅れてくるらしい。すまないが先にカラオケを満喫していてくれ、あとで合流するから、という旨の連絡がさっき入ったんだ。いやいや、本当に申し訳ないよ。僕の方から誘っておきながら、ね?」
「気にするな。第一に、ホイホイ付いてきてしまった俺の責任でもあるし、さ」
「このような事態をお招きしましたことを、深くお詫び申し上げる方向に検討を重ねるとともに、再発防止のため、万全を尽くすよう善処する所存であります」
「全然謝る気ねぇだろ!」
ごめんごめん、とトモヤは声を出して笑いながら繰り返した。果てしなく胡散臭い男だが、一方で眩しい笑顔の美少女が目の前に居るという光景に、あながち悪い気はしなかった。

「まぁ、店の前で立ち話もアレだし、遅刻組の提言どおり、先にカラオケを楽しんでおこうぜ」
「そうだね、合理的な判断だね。賢明な建斗くんに似つかわしい良策だわ」
あからさまなお世辞を吐きつつ、トモヤは続けた。
「ところで一つお願いがあるんだけど聞いてもらえるかな?いや、そんな改まったもんじゃないんだけどさ、ちょっとした頼みがあるんだ。建斗くんさ、今日一日僕の彼氏役を演じてくれるわけでしょう?でも、いきなり彼氏だとか言われても不自然な演技しかできないと思うんだよ。自分から頼んでおきながら本当に勝手だとは解かっているんだけど、素顔がバレちゃうと困るんだ。そこで、失敗しないようにあらかじめ練習しておきたいんだ。彼氏としての、練習をさ」
真摯な表情でトモヤは訴えてくる。言い分は解かるんだが、意味が解からない。
「彼氏の練習って、一体どうして欲しいんだ?」
親友は口許を綻ばせ、すかさず腕を翻して俺の手を握ってきた。突然の肌の感触に、脳内活動が全停止した。
「え、ちょ、な…」
反応に困る俺を意にも介さず、トモヤは嬉々とした足取りでカラオケ店の自動ドアをくぐった。半ば強引に俺を連行して。



カラオケの薄暗い個室の中、混乱しきった頭のまま俺はポリウレタン製のソファに腰掛けていた。隣には美少女装束を身にまとったトモヤが至近距離で座しており、繋いだ手を離す気配はまったく無い。
「そんな緊張されると僕まで変な気分になるよ。あくまで練習だからね」
言いながら、トモヤは指を絡ませてきた。耳元では息遣いが、手からは体温が伝わる。相手が親友のトモヤだとは知識で理解していても、五感が訴えてくる感覚はあまりにもリアルで、それ以上に頭が半ば真っ白だったので、隣に居るのは本当に女の子なのではないかと錯覚に陥る。

トモヤがさらに身体をくっつけてきたところで、俺は理性を取り戻し、一歩後ずさって距離をとった。不覚にも高鳴る心臓に、変な罪悪感を覚えた。俺は今、越えてはいけない一線を越えるところだったのだろうか、と。
「ごめんよ、ちょっと本気でやりすぎたかな。建斗くんの反応があまりにも面白いから、つい」
申し訳なさそうに苦笑しながら、トモヤは足を組み直して、スカートを整えながら姿勢を正した。こいつは一体何を考えているのだろうか?心中がまるで読めない。それどころか、あまりにも言動が意味不明で恐怖心が沸いてきた。

「ねぇ、建斗くん?例えばの話だけどさ。もし僕みたいな女の子からいきなりキスを迫られたら、どうする?」
唐突過ぎる発言に俺は一瞬固まってしまったが、一拍置いてから冷静に返答。
「お前みたいだったら退散する」
「据え膳食わぬは男の恥だよ?」
「お前を据え膳として見てねーよ」
「そう?」
「そうだ」
「ふーん」
トモヤは一瞬考えるフリをして、諦めたのか、そっぽを向いてしまった。そのまま返事も無く、しばらく時間が経った。
「どうかしたのか?」
心配になって歩み寄ると、あろうことかトモヤは間髪を容れず強引に唇を重ねてきた。軽く奇声を上げながら俺は後ずさり、テーブルの足に躓いて後ろから全力で転倒した。視界が回転し、後頭部を壁に殴打。全身が激痛に軋み、意識が飛びそうになった。しかし、そんな衝撃よりも、唇が触れた一瞬の感覚の方が衝撃的だった。大丈夫か、と慌てふためきながら駆け寄る似非少女を片目に、俺はこっ恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。

「ねぇ、建斗くん?ひとつ教えてあげようか?」
肩に腕を回して俺が起き上がるのを手伝いながら、耳元で囁いてきた。
「なんだよ、本気で気持ち悪いな」
「う・そ・」
「何が?」
「えへへ。実は、他校の友人なんて居ないんだよ。全部嘘だよ。ごめんね」
「はぁ?」
呆れ返る以前に、意味が飲み込めなかった。
「良心の呵責に耐えられないから教えてあげちゃうわ。実は今日の、彼氏を演じてくれ云々は、全部嘘なんだ。ドッキリとまでは行かないまでも、すべて建斗くんを誘うための口実だったんだ。誤解される前に断っておきたいんだけど、悪意は無いからね?ただ、一回だけやってみたかったんだ、彼氏ごっこ。そのために用意したのが今回のシナリオで、その絶好の機会がバレンタインだったわけ。ちなみに今朝の手紙の件は、これのための事前演出だったんだ。一番騙されやすいのは一回騙された人だ、という心理学的な統計もあるしね。結果論、女子と全く無縁な建斗くんでも、バレンタインデーだけの夢とはいえ僕みたいな女の子とラブラブできて有意義だったでしょ?反論は許さないよ、顔に書いてあるんだから。最終的には双方とも得をしたわけだね。僕自身は上手くいったと自負しているんだが、どうだろ?びっくりした?」
無邪気に笑いながら自慢げに語るトモヤ。
「勘違いされたくないので改めて述べておくけど、僕はあくまで異性愛者だからね。変な感情を向けられると困るんだよ。そう注釈を入れておくとともに、建斗くんが気分を害されたかもしれないことに配慮して、ここにて謝罪しておくよ。本当に申し訳ない。どうか親友の戯れの一環として大目に見てくれ」

トモヤの饒舌すぎる真相告白に返す言葉はなかった。俺はただ単に笑った。制御不能な哄笑が込み上げ、俺はソファを両手で打ちつけながら盛大に笑った。一瞬きょとんとしていたトモヤも、次第につられて、二人で大爆笑した。

ああ、面白すぎるぜ、そして理不尽すぎるぜ、トモヤよ!お前は本当に俺の親友でよかった!感動した!惚れた!惚れ直したぜ!

「そんなに喜んでくれるとは思わなかったよ、本当にありがたいね。祝賀会として後からチョコレートを…」
しかしトモヤの台詞を遮って俺は大胆な行動に出た。さっきのキスのお返し。動転する親友を羽交い絞めにしながら唇を思いっきり奪う。
「あくまで義理だからな、勘違いすんなよ」
驚愕に目を白黒させながらも、トモヤはなんとか頷いた。女だろうが男だろうが、金輪際関係ない。平凡に始まった今日も、トモヤの手に掛かれば世にも非凡なバレンタインデーに化ける。その不条理さを、理不尽さを俺は愛している。

その日は結局、最後まで美少女に扮した奇妙な男との二人きりの奇妙なカラオケデートを満喫することになった。当初は複雑な心境で臨んだものの、徐々に気分が晴れていき、カラオケは大いに盛り上がった。あっという間に時間は流れ、店を出る頃にはすっかり暗くなっていた。その後、約束通りトモヤは近所のコンビニにてチョコを購入し、「これで妄想とかされちゃうと嫌なんだからね!」という解釈不能な台詞を添えてプレゼントしてくれた。これってホワイトデーに返さないといけないもんなのだろうか?良く解からないが美味しく頂きました。

そんな感じに、俺の奇妙なバレンタインは幕を閉じた。翌日学校では『波中健斗が謎の美少女とデートしていた』というスクープが、尾ひれをつけた噂となって流れていた。居心地の良い話ではなかったが、俺は苦笑するしかなかった。平凡な俺が目立つきっかけを作るために、トモヤが意図的に自ら流した噂だとしても今更驚かない。見慣れた男子制服に身を包み、左右に伸びた黒髪を掻き分けながらニヤけている隣の親友に確認すればすぐに判明することだろうが。



終わり。

バレンタインである必要性が皆目見当たらない、バレンタイン小説でした('A`)
とっくに過ぎてしまってるし、別にいいか。(いいのか!?)

気分を害された方、ごめんなさい。この物語はフィクションであり、登場するすべての人物、出来事は架空のものであると願うばかりです。


>か
「発売中」に「絶賛」を付けると強調構文になるでしょ?
同じように「悩み中」に「絶賛」を付けると強調されるんだ


>ふーみゃ
結局予定変更されましたがお疲れ様でした^^


>クロフク
国立を舐めるなよ?センターの点数ボーダーラインに足りてないんだぜ?

2009-02-12

不条理で理不尽な世界に捧げるバレンタイン 前編

高校生のしかも二年生にもなって今更第二次反抗期めいたことをぬかすつもりは毛頭ないが、どうにかしてこの心の中の黒い塊を吐き出さないと精神衛生上よろしくないと判断し、俺、波中健斗は、高らかに宣言したいと思います。

世の中は不条理だらけだ、と。

世界に蔓延る理不尽な事柄なんて、挙げればキリがないのは周知の事実。貧富の差に食糧問題、児童虐待に無差別殺人。いずれも非常な憤りを感ぜざるを得ない社会問題だし、世の中はこういった不合理に覆い尽くされている。根本的な解決策は見つかるかもしれないし、見つからないかもしれないが、俺が言いたいのはそういうことじゃなくて、いまこの波中健斗が問題視している不条理とはすなわち、バレンタインデーである。バレンタインデー…、諸君の想像通り、毎年2月14日に訪れる恒例の、女性が意中の男性に対してチョコレート等の品々を贈呈するイベントのことだが、何が許せないかと言うと、結局チョコを総舐めするのが、イケメンであること。外見による印象は本人にはどうしようもないことだが、だかろこそ不条理なのだ。世の中のブサイク連中はどうすればいいのだ!一見、他の重大な社会問題と列挙すればチョコ格差は些細な項目のように思えるかもしれないが、それは決定的な間違いだ。まず第一に、イケメンによるチョコ占領は独占禁止法に抵触する。下手すれば最高裁判所沙汰だ。そして第二に、イケメン・ブサメン格差は、すなわち遺伝的優劣によるものであり、かつてヒトラーが行ったユダヤ人大量虐殺と同じ風潮が根底にあるのであって、現代日本に蔓延する数々の不平等の象徴とも言える。近年は逆チョコや友チョコなど多彩な新興習慣が各地で楽しまれているが、依然としてイケメンによるバレンタインチョコ独占は深刻な問題といえよう。

そんなどうでもいいことを暇潰しに考えながら登校していると、いつの間にか学校の正門に到着していた。肌寒いが爽やかな空気に包まれた早朝の高校。すれ違う教師の方に挨拶し、下足場で上履きに履き替えて、教室まで足を運ぶ、いつもと変わらない朝。ただ一つ、バレンタインデーであることを除けば、平凡な一日の話である。

寒さに身震いしながら俺は廊下を歩いた。まだ早朝ということで生徒数は少なく、校舎内は独特の静寂に包まれていた。特に冬の朝は、何ともいえない気持ちのいい静謐な時間が満喫できるので、俺は毎朝こうして早朝登校していた。

「おはようちゃん」
背後から拍子抜けた挨拶を放ったのは、友人のトモヤ。今は別々のクラスだが、一年のとき一緒で、未だに付き合いのある数少ない親友の一人である。自慢ではないにしろ、昔から俺は他人とのベタベタとした馴れ合いは苦手で、どんな人間関係でも常に一定の距離を置かないと落ち着かない性分だったわけだが、その中でもトモヤは、本当の意味で心を許せる貴重な存在だった。

「おはようにちゃんづけとは、朝から殊勝なテンションですな」
俺の適当な返答にトモヤは、左右に伸びた長い黒髪を掻き分けながらニヤけていた。端整な顔立ちと驚くほどに白い肌が、華奢な体つきとの相乗効果で中性的な外見を演出していた。もし女性としてこの世に生を授かっていたとしたら、さぞや美人だろうな、と思わなくもない。

「それが僕のレゾンデーテルさ」
意味不明な捨て台詞とともにトモヤとは俺の教室の前で別れた。アホなやりとりのお陰ですっかり目が覚めてしまったのは、良かったことにしておこう。

ガラガラガラ、と教室の扉を開ける。二、三人、朝から勉強に励む真面目な生徒以外、空っぽだった。これもいつも通り。勿論俺はそこまで優等生ではないので、どちらかというと音楽を聴いたり読書したりして早朝の時間を潰すことが多い。オーディオプレイヤーを取り出そうと屈むと、自分の机の中に不審な封筒が眠っているのを発見した。

まさか、女の子から?バレンタインデーであるのは間違いないが、今まで女子に全くといっていいほど縁が無かったこの俺に、惚れる女性が居るとは思い難いし、やはり自意識過剰なのかもしれない。しかし俺は彼女いない暦イコール年齢の生粋の童貞、期待に胸を膨らませずにはいられない。封筒の表には達筆な文字で「波中健斗さんへ」とあった。

まず周囲の視線がないことを確認して、封筒から中身の手紙を取り出す。そこには、綺麗な手書きで信じられない内容が記載されていた。

突然ですが渡したいものがあります
昼休みに東校舎裏まで来てください
楽しみにしています♪


最初はわが目を疑った。幻覚ではないのか?ついに末期症状が発症したか!と思ったが、瞬時に理性を取り戻して平静を繕う。眼前には確かに手紙があるし、内容の読み間違いでもない。ついに俺の時代が来たのだ。俺の中で歓喜の声援が上がる。「おめでとう!」「これで君も立派な男だ!」「イケメンの仲間入りかもしれないぞ!」思い返せば俺は、昔からまるで目立たない奴で、これといった特徴も無く、女子が振り返るような容姿も生憎持ち合わせていない。そんな平均的な人生も悪くはないな、と最近思い始めていたのだが、心の隅のどこかでそれを受け容れていなかったのかもしれない。手中にある手紙を改めて読み返し、喜悦に浸りながら俺は確信した。やはり男には、追求しないといけないロマンがある、と。

教室に女子の集団が入室したところで素早く封筒と手紙を鞄にしまい、手紙の主はどんな娘なのか、あれこれ想像しながら午前中の授業を過ごした。妄想に耽っているといつの間にか昼休みが訪れ、俺は弁当も摂らないまま足早に東校舎裏を目指した。



約束通り、東校舎裏のベンチに俺の待ち人は座っていた。座っていた、のだが。予想外すぎるその人物に、俺の脳はしばらく固まったままだった。

「来てくれて嬉しいわ」
彼女 - いや、彼は、左右に伸びた黒髪を掻き分け、手を振ってきた。学校指定の女子用ブレザーに紺色のスカートを身にまとったそいつは、傍から見れば女の子にしか見えないが、顔はどう善処しても俺の良く知るトモヤのそれだった。しかも女装は見事なもので、声帯模写技術まであるのか、声に至っても女子そっくりだ。見慣れた顔が女の声を発しているという違和感以上に、状況が飲み込めない精神的混乱の方がひたすら大きかったが。

「どうしたの?幽霊でも見たような顔をしてるけど?」
「あの…お前…?」
「あー、もしかして驚いてる?そりゃ、驚くよね。驚かれても仕方ない状況だよね。失礼、失礼。改めて自己紹介するわ。自己紹介ていうか、カミングアウトだけどね。僕、実はその、女装趣味なんだ。あ、勘違いしないでね。一応、オカマとかじゃないから。たぶんだけど、異性愛者だから。告白とかじゃないから、ね?どう、似合ってる?」

普段から言動はちょっぴり浮いているな、ということは過去にあったけど、浮いているといってもそれ程度で、まさかこれほどまでにかけ離れた存在だったとは思っていなかったので、俺は相当驚愕していた。トモヤの女装趣味という事実にも吃驚していたし、そして二人の温度差にも驚かざるを得なかった。スカートを翻しながらアピールしていた当の本人は、まるで俺の反応が理解できないといった風情で、不思議そうに俺を覗き込んでいる。

「じゃ、…あの手紙も…?」
冷静さを若干取り戻し、恐る恐る俺は当然の疑問を口にした。
「うん、僕からだよ。健斗くん女に弱いから。普通に誘っても面倒くさがって来そうにないし、それ以前に面白みがないし、ね?一時だけど夢が見れて良かったでしょ?あ、ごめん!渡すものがあるって言っておきながらチョコを用意するの忘れてた!また帰りに買ってきてあげるからね!」
呆れを通り越して俺は半分キレていた。滅多に感情をあからさまに表に出さないのが俺の性分だが、今回ばかりはあんまりだ。同じ言語を喋っているとも思えない様相だったので、俺は声を荒げざるを得なかった。

「あのさ、お前は一体なにがしたいわけ?俺を呼び出すために洒落た小細工まで使ってさ」
「ごめんごめん、騙したことについては素直に謝るよ。あれはいわゆる若気の至りだ。二度としないと先祖の墓に誓うよ。実は用件はカミングアウトの方じゃなくて、別に頼みがあるんだ。呆れ返りたくなるお前のその気持ちも嫌というほど解かるが、どうか僕の言い分も最大限汲み取って冷静に聞いてくれ。実は今日の放課後、新しく知り合った他校の男女数人とカラオケすることになって、つい会話の流れでそいつらに彼氏が居ると豪語してしまったんだ。あ、補足しておくと、彼らは僕のことを女だと思い込んでいるわけ。一応、女装には自信あるからね。そうじゃなくて、僕が言いたいのは、そう。健斗くん!助っ人として一緒に来てくれ!勿論フリだけでいいから、今日だけ彼氏になってくれ!頼む!」

突然地面に伏し、土下座までしてトモヤは懇願してきた。自分の面目保護のために擬似彼氏になってくれ、と。親友といえども、一回騙されてまで他人の失言の後処理を手伝う義理はないのだが、昼休みということもあってそこそこ人通りのある東校舎裏で、目の前に女子が土下座しているという光景は非常に俺にとって分が悪く、一時的にでも何とか処置しておかないとあらぬ噂が流れ兼ねないので、とりあえずOKしてしまった。さては、トモヤのやつ全部計算通りだな。世の中の不条理に一つ追加でお願いします。

「ありがとう!さすが親友の健斗くん!全身全霊をかけて僕が擬似彼女となって差し上げるから、今日学校が終わったらすぐ駅前に集合ね!それじゃ、ばいび~」
言いたいことを言い終えると、トモヤは脱兎の如く校舎に駆け戻った。不都合な切り返しを許さない見事なタイミングでその場を去ったのだ。そしてまもなく始業のチャイムが響き、俺も深いため息とともに重い足を教室に向かって運ぶのであった。何してんだろ、俺。せっかく一年に一度のバレンタインだというのに。頭上で爽やかに照る太陽までもが理不尽に感じられた。なにはともあれ、長い一日になりそうだ。



たぶん続く

字数規定を大幅にオーバーしたので独断と偏見でシリーズ化('A`)
2000字以内で起承転結をしっかりやるなんて不可能だよ!

とりあえず、感想や指摘などくれると喜びますw
プロフィール

百合水仙

Author:百合水仙
大学生♂

リンクフリー、晒しフリー。相互リンクも大歓迎です。相互リンクを希望の方は最新記事のコメントでお知らせ下さい




同人音楽イベントまとめ
イベント毎に作成しているCDのまとめです。完全なリストではなく、俺が勝手に注目するサークルだけをピックアップしているので、趣向の偏りは否めないですがあしからず。

M3-2011春
C79 (非東方系)
C79 (東方系)
M3-2010秋
C78 (非東方系)
C78 (東方系)
とら祭り2010
M3-2010春
例大祭7
C77 (非東方系)
C77 (東方系)
東方紅楼夢5
M3-2009秋
C76 (非東方系)
C76 (東方系)
M3-2009春
例大祭6
C75 (最終まとめ)
C75 (非東方系)
C75 (東方系)
東方紅楼夢4
M3-2008秋
C74 (最終まとめ)
C74 (非東方系)
C74 (東方系)
例大祭5
オヌヌメ














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