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2008-11-24

好きです…、付き合ってください!!

そんなありふれた台詞を力一杯紡ぎながら、紅いランドセルの彼女は、深々と俺の前でお辞儀をした。後ろで結った艶やかな黒髪が一緒に垂れて、愛らしいうなじをあらわにした。

俺は困惑するしかなかった。

聞こえなかったと判断したのか、彼女はもう一回大きく息を吸ってから告げる。
「城咲先輩のこと、大好きです!付き合ってください…!」

学校帰りの歩道の真ん中、10歳年下のロリっ娘にいきなり告白を喰らうという珍体験。それ以前に気になるのが、何故この少女が俺の名前を知っているか、だ。奇異の視線を向けてくる通行人を全力で無視し、俺は精一杯の自然さを装って、当然の疑問を口にする。

「誰?」

呆れた、とでも言うように彼女はお辞儀をやめて俺のすぐそばまで歩み寄り、あろうことか俺に蛇睨みをくれた。両腰に手をあてがいながら俺の爪先から毛先まで、舐めるように観察する。ますます状況がわからない。

そして一言。
「付いてきて」
「どこに?」
「あたしの家に決まってるでしょ」

手首を掴まれて引きづられては抵抗のしようもない。この状況で彼女の機嫌をこれ以上損ねたら、周りからきっと変質者扱いされて、下手したら通報され兼ねないだろう。数々の疑問をとりあえず封印しておいて、後からゆっくり説明を求めるのが賢明と判断。それにしても、いい年した男子高校生が、10歳年下の女児に下僕の如く連行される光景は、さぞかし奇怪だろうな。

迷いのない足取りで彼女は進む。あとどのくらいかかるの、という類の質問を尽く無視しながら商店街を抜ける。

やがて大きく開いた空き地に到着すると、彼女は振り返った。
「ここがあたしの家よ」

自慢げに空き地を指差す彼女。木々が茂る一角に、申し訳程度に遊具が並んでおり、その空き地が公園であることを自ら示している。もう夕方が近いらしく、巣に帰省する鳥たちの鳴き声が空を彩る。

「そういう遊びか?」
「遊びじゃないわよ!」頬を膨らませて猛抗議する彼女。動作の一つ一つが猫みたいな女の子だなぁ、と思った。「あたしはここに住んでるの!」

「両親は?」
「居ない」
「じゃ、どうやって学校行ってるの?誰が生活の面倒を見てくれてるわけ?」彼女の冗談なのか悪戯なのかに付き合う義理はないが、いちいち反応が面白いので、ちょっと意地悪になって質問攻めしてみる。彼女は面食らったように後ずさり、たどたどしい様子で応えた。

「あたし、バイトやってるから、それで生計立ててるの。学校は毎朝自分で支度してるし」
冗談もここまで来ると殊勝だ。そもそも小学生でバイトなんてできないだろう、と突っ込もうかと思ったが、そろそろ疲れたので帰宅を促すようにした。

「そうかい、そうかい。偉いなあ。じゃ、そろそろ家に帰ろうぜ?親が心配してるだろう」
彼女はまた睨んできた。ギロッ、という凄まじい擬態語がいかにも適用されそうな睨みだった。
「住所どこだ?俺が家まで送ってやるからさ」

「あたしの家はここだってば」
説得するような口調で彼女は繰り返す。いい加減しつこいです。

「生徒手帳あるだろう?住所見せろよ」
小学生相手にちょっと荒い言い方をしてしまった、と反省。しかし彼女は怯えた様子もなくスカートのポケットから一冊の手帳を取り出した。最後のページに繰るとそこには彼女の顔写真と個人情報が記載されてあった。

名前欄を確認。「高倉百合子 8歳」とあった。8歳、ということは小学二、三年生かな?続いて住所を確認。勿論「不詳」などと記載されているはずもなく、ちゃんと近所の住所があった。

「帰ろう、百合子ちゃん」
馴れ馴れしい台詞を吐きながら少女の手首を掴む。抵抗する気配はなかった。立場が先刻と見事に逆転していることを考えると滑稽だった。急に大人しくなった百合子ちゃんを自宅まで送ることにした。あの告白は一体どういうことだったのか、問いただしてやろうかとも思ったが、一向に教えてくれる気配もないので、悪戯の一環であろうと勝手に納得しておくことにした。

公園兼空き地を抜けて一軒家が立ち並ぶ住宅街に進入。住所が記載された表札を一軒ずつ確認しながら少女の自宅を探す。いい加減、嘘でしたごめんなさい、と開き直ればいいのにと思う。まぁ、それはこの年頃特有の無意味な意地であると割り切ろう。辺りはすっかり暮れ始めていて、俺は一体何をしているのだろうという疑問に苛まれる。時折吹き抜ける肌寒い風に秋の到来を実感する。

十数分歩いてやっと目的の住所を発見。奇怪なことに表札は「磯野」という苗字を表示していた。この少女は確か、「高倉」だったよな…?母親が再婚したのだろうか、とか考えながら呼び鈴を鳴らす。手を握ったまま百合子ちゃんは黙りこくったままだった。相変わらず謎な娘である。

ほどなくして中年の女性が玄関から顔を覗かせた。
「どちら様でしょうか」

「娘を預かっている者です。最近物騒ですから、こんな遅くまで出歩かないよう注意でもしといて下さい」
言いながら百合子ちゃんから手を解く。変態だと思われたら嫌だ。しかし、返ってきたおばさんの返事は予想外のものだった。いや、見事に予想外が的中したとでも言うべきか。

「そんな娘、知りませんよ?さっさと帰ってくれ」

拒絶の言葉を吐きながらおばさんはバタン、と玄関を閉めた。その無慈悲な音だけが冷たい空に残響する。百合子ちゃんはひたすら俯いていた。よく見ると、目が赤く腫れていた。途方もない真実に俺も呆然とするしかなかった。

改めて俺はその事実を反芻した。百合子ちゃんは本当に孤児なのだろうか。いや、受け容れようが受け容れまいが、それは紛うことない真相だろう。俺は何度も生徒手帳の住所と表札を見比べて、残酷すぎる真実を飲み込もうとした。今すぐにでもおばさんがもう一回玄関を開けて、「実は冗談でした」なんて言ってくれることを切に願った。だが表札を見比べるたびに、重すぎる現実をただ突きつけられるだけだった。

彼女の話が何処まで本当なのかは憶測の域を出ないが、おそらく生徒手帳に適当な住所を書いて自らの手で偽装したんだろう。もしかして、本当に公園で暮らしているのだろうか…?もしそうなら、なんと残酷なことだろう。10歳にも満たない無力な少女が、あまりにも無慈悲な世界に一人、ぽつんと。

最初は冗談か悪戯だろうと思い込んで馬鹿にしていたのに、。そんな自分が恥ずかしい。俺はこの少女を傷つけてしまったのかもしれない。百合子ちゃんに、深く傷を負わせてしまったに違いない。

少女は泣いていたのか、それとも寒かったのか、肩を小刻みに震わせていた。そのあまりにも無力な姿に、気持ちを抑えられなくなる。いつのまにか俺は、優しく彼女を抱き締めていた。
「ごめん…。信じてやれなくて本当にごめん…」

「あたしの話を…聞かないんだから」
強気な言葉の裏で声は震えていた。目を真っ赤に腫らしながら百合子ちゃんは鼻を啜る。その一部始終、冷たい秋風が木々を揺らす音が世界のすべてだった。





衝動で書いた小説です。一応、一話完結のつもり。結局あの告白はなんだったのだ!?実はこの少女、主人公に一目惚れして毎日放課後ストーカーをしていた、という裏設定。電波ヤンデレツンデレロリっ娘である。本当は両親が居て、生徒手帳もおばさんも全部盛大なドッキリ、という展開も考えていたんですが、せっかくの空気をぶち壊すのは憚られたのでお蔵入り。

感想くれると喜びます。


>ホームレス小学生ならぬホームレス高校生
一人芝居ですね、わかります。


>サンダウナーズ改めNimys
自分も音ゲーは苦手です。東方はある程度できるけど、音ゲーは無理!あれは修行僧のための修行道具ですよ。
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百合水仙

Author:百合水仙
大学生♂

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同人音楽イベントまとめ
イベント毎に作成しているCDのまとめです。完全なリストではなく、俺が勝手に注目するサークルだけをピックアップしているので、趣向の偏りは否めないですがあしからず。

M3-2011春
C79 (非東方系)
C79 (東方系)
M3-2010秋
C78 (非東方系)
C78 (東方系)
とら祭り2010
M3-2010春
例大祭7
C77 (非東方系)
C77 (東方系)
東方紅楼夢5
M3-2009秋
C76 (非東方系)
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M3-2009春
例大祭6
C75 (最終まとめ)
C75 (非東方系)
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東方紅楼夢4
M3-2008秋
C74 (最終まとめ)
C74 (非東方系)
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例大祭5
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