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2008-09-07

弔問客の男に惚れて息子を殺した未亡人 第7話

ユウ君は驚愕の表情を浮かべたまま玄関前に立ち尽くしていた。愛情たっぷりな私のお迎えを意にも介さず、ただ呆然と眼前に横たわる自分の妻を眺める。ショック性全身硬直ってやつかな?いきなりの状況が飲み込めないのも無理なかろう。

「ユウ君、どうしたの?顔色悪いよ?」
顔面蒼白な彼を気遣って優しい言葉をかけてみる。

がしかし彼は憎悪の形相で私を一瞥するだけで、すぐさま自分の嫁だったソレへ駆け寄る。胸に手をあてがって心音を確認し、耳を口元に接近させて呼吸を確かめる。何度も何度もこれを繰り返し、そのたびに顔面がありえないほど青ざめていく。終いには涙目で妻の名を呼びながら床に頭を伏した。大の男が号泣する姿なんて見るのは初めてだった。それでも僅かな可能性を信じてか、彼は泣きじゃくりながら人工呼吸を開始。一部始終、妻の名前を絶叫するユウ君の声が虚しくマンション内に響き渡っていた。

その光景をひたすら傍観していた私の内部で、混乱とともにどす黒い感情が渦巻く。

どうして、ユウ君は妻を助けようとするのだろう。理解できない。居酒屋で散々、妻の不満を吐いていたあのユウ君が。記憶と現実が上手く重ならない。合致しない。致命的なズレが、ノイズが私の脳内を抉る。

どうして、ユウ君は私を無視するのだろう?理解できない。あれほど愛し合った私を、私の存在を、まるで路傍の石を見るような目で。
…路傍の石?前言撤回。そんな無関心なモノではない。さっきのユウ君の目には、嫌悪があった。ゴキブリと蛆虫の集団交尾に脚を突っ込んだような嫌悪感が宿っていた。どうして?理解不能。

私を憎悪する要因が見当たらない。邪魔者である妻を排除して差し上げたのに。むしろ感謝されるべきである。このユウ君は明らかに私に悪意を持っている。

窓から差し込む夕焼けの光が残酷に部屋全体を照らす。時計が刻む針の音が不愉快な波長で規則的に軋む。

そんな中、意外な答えが私の中で閃いた。

目の前の男はユウ君では…ない?

単純すぎる解答。今までの不可解が、砂の如く瓦解していく。どうして気づかなかったんだろう…?私は世紀の大馬鹿者である。こんな当たり前の真実を見逃すなんて…。

眼前のユウ君は、悪霊に憑かれているのだ。私に悪意を持つ霊がユウ君の精神を支配し、私の世界を崩壊させようとしている。それしかありえない。

しかし、誰の霊が?頼りない記憶を掘り返して、私を憎む理由のあるような人間を検索。

しばらくせずして、またもや意外な人物の名前が浮上。

…私の息子。
幼くして命を奪った自らの母親に復讐する魂胆で、母親の愛人に憑依したんだ。なるほど、あらゆる謎がすべて論理的に連結していく。

私は祈祷師ではないが、憑依した息子を祓うにはどうすればいいか、本能的に理解していた。無意識に右手はポケットを探って、スタンガンを強く握り締めていた。汗ばんだ手でそれを腰の後ろに構えてユウ君に接近し、機会を伺う。

「お前…どうしてここに居るんだよ」
掠れた声で彼は当然の疑問を口にする。

私は敢えてそれに答えず、無言で彼の背後に回った。悪霊が攻撃してこないのを不信がり、私は警戒しながらさらに接近。

「どうして居るのか訊いてんだよ!!!」
地獄の形相で罵声を挙げるユウ君。人間ならざる、霊界からの呪詛。ユウ君の声を借りた息子の怨恨が凄まじい破壊力で室内を幾度も木霊する。

「ユウ君…」
小刻みに振るえる背中に呼びかける。当然、返事はない。

私は最大出力でスタンガンをその背中に叩き込んだ。理性は、とっくに吹っ飛んでいた。一緒に心中するつもりで何度も何度も、凶器を打ち込む。鮮烈な放電音を立てながら紫電が疾る。手の中のスタンガンがオーバーヒートしたのか、バッテリーが黒煙を噴いている。手の火傷しそうな痛みを我慢して、さらに叩き込む。私のユウ君。愛するユウ君。

先刻見た悪夢のイメージが脳裏を掠める。漆黒の宇宙で母親を呼ぶ息子。少年の嗚咽が、ユウ君の絶叫と重なって不協和音を奏でる。断末魔の叫び。それを、息子が歪んだ笑顔で嗤う。もう、何もかもが狂っている。狂っている!

気がついたら、ユウ君は床に倒れ伏していた。妻の遺体に覆い被さる形で、激しく痙攣している。生体反応としての痙攣ではなく、彼は既に死亡しており、運動神経に蓄蔵された電気が放電を繰り返しているだけだろう。

私は、手の中で煙を噴出し続けるスタンガンを、壁に向かって投擲。凶器は脆くも、衝撃で分解した。

玄関前に横たわる二人の遺体を呆然と眺めていると、一気に緊張から開放され、私も床に寝転んだ。眼には原因不明の涙が溢れていた。嗚咽を漏らしながら、私は意味の解からない感情の海に身を任せて号泣。しばらく泣きじゃくっているうちに、意識は遠のき、いつの間にか静かな眠りに就いていた。

窓から差し込んでいた夕日はいつしか月光に変わっていて、時計の相変わらず不快な軋みを残酷に照らしていた。



>Phantom
PC大破ですかwwご愁傷様です。私なら軽く禁断症状を発症しかねない状況ですな。

実はO型ですよw
性格はA型とB型とAB型の混合物だが、混ぜたら結局はAB型ですね。
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